【3224】 ○ 深作 欣二 (原作:高見広春) 「バトル・ロワイアル (2000/12 東映) ★★★★

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渋谷TOEIの閉館最終上映作品は、「暴力映画の巨匠」深沢欣二監督の復活作。

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バトル・ロワイアル [DVD]」藤原竜也/柴咲コウ
 新世紀の初め、経済危機により完全失業率15%、失業者1,000万人を突破。大人を頼れない子供達は暴走し、学級崩壊や家庭崩壊が各地で発生。少年犯罪は激増し、不登校児童・生徒は80万人。校内暴力による教師の殉職者は1,200人を突破。自信を失くし子供達を恐れた大人たちは、やがて新世紀教育改革法(通称「BR法」)を「バトル・ロワイヤル」b.jpg定める。誰もが恐れる「死」を利用し、恐怖による支配により大人の威厳を取り戻す目的で施行されたこの法律は、年に一度全国の中学校3年生の中から選ばれた1クラスに、コンピュータ管理された脱出不可能な無人島で、制限時間の3日の間に最後の一人になるまで殺し合いを「バトル・ロワイヤル」01.jpg強いるという法律だ。(以下、本編あらすじ)今回BR法に選ばれたのは、城岩学園中学3年B組の生徒たちだった。修学旅行のためにバスに乗ったはずが催眠ガスで眠らされ、無人島に連れてこられた生徒達は、元担任のキタノ(ビートたけし)によりバトル・ロワイアルについて説明される中、見せしめに生徒2名が殺害される。3日間のタイムリミット内に最後の一人になるまで殺し合わなければ、生徒全員に嵌められた首輪が爆発する。少ない食料と水、地図・コンパス・懐中電灯、ランダムで選ばれた様々な武器や道具などが生徒全員に手渡され、狂気のデスゲームが開始される。出発地点から出た直後に、主人公の七原秋也(藤原竜也)は「バトル・ロワイヤル」4.jpg他の生徒から襲われる。極限状態に追い込まれた生徒たちは、様々な行動に出る。昨日までの友を殺害する者、諦めて愛する人と死を選ぶ者、力を合わせて事態を回避しようとする者。自分から志願してゲームに参加する転校生の桐山和雄(安藤政信)に殺戮される者。そんな中、七原秋也は、同じ孤児院で育った親友・国信慶時(小谷幸弘)が仄かな想いを寄せていた中川典子(前田亜季)を守るため、武器を取ることを決意。当て馬としてゲームに参加した転校生の川田章吾(山本太郎)と共に島からの脱出を図る―。

上左から山本太郎・安藤政信・柴咲コウ・栗山千明

渋谷TOEI2.jpg 深作欣二(1930-2003/72歳没)監督の2000年公開作で、2000年度・第43回「ブルーリボン賞」作品賞受賞作(原作は高見広春の同名小説『バトル・ロワイアル』)。個人的には、劇場ではまだ観ていなかったのですが、宮益坂下の「渋谷TOEI」が今月['22年12月]4日(日)に営業を終了し、69年の歴史に幕を閉じるに際して、最終日に「鉄道員(ぽっぽや)」と「バトル・ロワイアル」が特別上映されることになったので観に行きました(料金は各500円)。

 中学生が殺し合うという衝撃的なテーマと過激な暴力描写でR15指定になり、青少年へ悪影響を及ぼすとして国会でも議論になり、深作欣二監督は「中学生にこそ見てもらいたい」と反発、その注目度の高さから、結果、興行収入31億円のヒットとなり、同館でも直営館としてNo.1の興収を稼ぎ、ラストシーンが渋谷のスクランブル交差点だったことから、ラストを飾る作品に選ばれたそうです。渋谷TOEIでのラストショー上映に際しては、深作欣二監督の長男で同作の脚本・プロデューサーの深作健太氏と、同じくプロデューサーの片岡公生氏のトークショーがありました。

 映画公開当時、深作親子らは、前日の夜に車で「丸の内東映」(当時)に行ったそうで、健太氏は「劇場を多くの人が囲んでいたのを見た時の親父の顔が忘れられない」と懐かしんでいましたが、その時、「渋谷東映」(当時)の方が、道路にまで人の列が溢れて「大変なことになっている」との連絡が入ったそうです。

 暴力を描くことを通して暴力の虚しさを表現するという意味では、「仁義なき戦い」シリーズ以上に成功しているかもしれず、ヤクザ映画の衰退で低迷していた深沢欣二監督の復活作となりました。先にも述べたようにR15指定であったので、中学生が主人公ながら現実の中学生は観られなかったわけですが、ブラック・ファンタジーと言うかある種の寓話であって、若年層が観た方が自分に近いところでいろいろ考えさせられる作品ではないでしょうか。

 海外でも、「バラエティ」誌は、「深作が減速しているという兆候はない」、「日本の暴力映画の巨匠としての地位に復帰した深作欣二の、彼の最も凶悪でタイムリーな映画のひとつ」と述べ、スタンリー・キューブリックの「時計じかけのオレンジ」('71年/英・米)と比較しています。

クエンティン・タランティーノ.jpg 海外と言えば、映画監督のクエンティン・タランティーノが、この作品を「過去20年間で見た中で最高の映画」、「ここ数十年で最も影響力のある映画の一つと考えている」として高く評価していて、同監督の映画「キル・ビル」('03年/米)(この作品に出ている栗山千明が出演している)が影響を受けているとされています。

 メイキング映像では、タンクトップ姿の深作欣二が動き回っていて、とても70歳には見えないエネルギッシュな印象でした。復活作と言えるこの映画の公開から僅か2年後に、前立腺ガンの脊椎転移により亡くなったのが惜しまれます。

「バトル・ロワイアル」5.jpg 当時18歳だった藤原竜也は、1997年に蜷川幸雄演出の舞台「身毒丸」主役オーディションでグランプリを獲得し俳優デビューしていましたが、深作欣二監督から「演出は蜷川より俺の方が上だからな」と言われたそうです。監督ってそれぐらい自信がないとダメなのでしょう。当時16歳だった栗山千明(石井隆監督のバイオレンス・アクション映画「GONIN」('95年/松竹)に10歳で出ていた)、18歳だった柴咲コウ、25歳だった安藤政信、同じく25歳だった山本太郎・現参院議員らの中学生役というのも見どころです(童顔の藤原竜也がいちばん変わっていないか)。

「バトル・ロワイアル」42.jpg それにしても、男子生徒21人、女子生徒21人、計42人というのは2000年当時標準的だったのだなあ。今は中学校の1クラス平均は29人と、30人を切っているようです。

渋谷TOEI3.jpg「バトル・ロワイアル」●制作年:2000年●監督:深作欣二●製作:片岡公生/深作健太●脚本:深作健太●撮影:柳島克己●音楽:天野正道●原作:高見広春●時間:114分(劇場公開版)・122分(特別篇)●出演:藤原竜也/前田亜季/山本太郎/栗山千明/柴咲コウ/安藤政信/小谷幸弘/塚本高史/美波/山村美智子/谷口高史/宮村優子/ビートたけし●公開:2000/12●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷TOEI1(22-12-04)(評価:★★★★)

渋谷TOEI(2022年12月4日)

渋谷東映(渋谷TOEI) 東映初の直営劇場「渋谷東映」と「渋谷東映地下」として1953年に開業したが、1990年9月16日にいったん閉館し、その後、同地に建て替えられた「渋谷東映プラザ」内に1993年2月20日「渋谷東映」(7階)と「渋谷エルミタージュ」(9階)が270席と189席の2スクリーンでオープン(2004年10月9日~「渋谷TOEI1」(7階)・「渋谷TOEI2」(9階))。2022年12月4日閉館。
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